WHO IS BANKSY?

バンクシーの作品

Forgive Us Our Trespasses

2010 Offset lithograph (poster)
59.4×42cm Private Collection

壁をグラフィティで汚したことについて、神の赦しを乞う幼いストリート・チルドレン。少年の頭上には、黄色のペンキが滴る天使の輪が皮肉っぽく描かれている。「Forgive Us Our Trespasses(我らの罪を赦したまえ)」とは、「主の祈り」の一節であり、「trespasses(罪)」もしくは過ちの赦しを乞うものだ。しかしバンクシーはここで、この一節に文字通りの意味を与えている。つまり、あらゆるグラフィティ・アートは他人の所有物に対する「trespasses(侵害)」であるが、グラフィティ・アーティスト自身は無垢な存在であり、寛容に値すると確信しているようだ。 本作は、2010年、ユタ州ソルトレイクシティの壁画として登場。当初は、やや単純な体裁を呈していたが、同年にポスターとして再発表された際に初めて、黄色のペンキが滴るきわめつけの後光が描き加えられた。その後、このポスターがバンクシーのドキュメンタリー映画『Exit Through the Gift Shop』の宣伝に使用されたのは、もっとも言うほかない。なぜなら、同作の根底をなすテーマは、現代社会において何が「本物」で何が「オリジナル」かという問いだからだ。問題となる違反行為が、壁にペンキをぶちまけたグラフィティであれ、他人の芸術的イメージの流用であれ、その人が「侵害行為を犯した」と断言する権利が誰にあると言うのだ。

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