Welcome to Hell(Pink)
2004 Screen print on Paper
50×35.2cm Private Collection
バンクシーが2004年に発表したシリーズ「プラカード・ラット」のうちの一つ。元は3つの作品からなる3部作で、それぞれにプラカードを掲げるネズミ(ラット)が描かれている。本作には「Welcome to Hell(地獄へようこそ)」、他の二つには「Get Out While You Can(逃げられるうちに逃げ出せ)」と「Because I'm Worthless(なぜなら、俺は無価値だから)」とあり、3つすべて合わせると、今日の社会で見過ごされがちな不遇な貧者たちの空しさを強調するメッセージとなる。敵意に満ちたネズミの表情と首から提げたピースサインとのコントラストが観る者の目を奪う。また、プラカードに記された文字が、飛び散った血をほうふつとさせる点も、断絶感を際立たせている。 この作品にも感じられるのが、フランスのグラフィティ・アーティスト、ブレック・ル・ラットの影響。彼は、パリのストリートの壁という壁に社会意識の高いネズミたちを走り回らせた張本人である。 ネズミは、バンクシーの作品で、ひときわ強い存在感を放つ存在。その理由について、バンクシーは『Wall and Piece』(2005年)で次のように説明している。「彼らは許可なしに生存する。彼らは社会から嫌われ、追い回され、迫害される。ゴミにまみれて絶望のうちに粛々と生きているが、彼らはすべての文明を破滅させる可能性を秘めている。もし君が、誰からも愛されず、汚くて、取るに足らない人間だとしたら、ネズミは究極のお手本だ。」
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